東スポを超える日本一のタブロイドを目指す!(笑)
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「プロメテウスの罠・防護服の男(4) 殺人罪じゃないか」

 SPEEDI(スピーディ)というコンピューター・シミュレーションがある。政府が130億円を投じてつくっているシステムだ。放射線量、地形、天候、風向きなどを入力すると、漏れた放射性物質がどこに流れるかをたちまち割り出す。

 3月12日、1号機で水素爆発が起こる2時間前、文部科学省所管の原子力安全技術センターがそのシミュレーションを実施した。放射性物質は津島地区の方向に飛散していた。しかし政府はそれを住民に告げなかった。

 SPEEDIの結果は福島県も知っていた。12日夜には、東京の原子力安全技術センターに電話して提供を求め、電子メールで受け取っていた。しかしそれが活用されることはなく、メールはいつの間にか削除され、受け取った記録さえもうやむやになった。

 3月15日に津島地区から避難した住民に、県からSPEEDIの結果が伝えられたのは、2カ月後の5月20日だった。県議会でこの事実が問題となったためだ。 福島県の担当課長は5月20日、浪江町が役場機能を移していた二本松市の東和支所を釈明に訪れた。

 「これは殺人罪じゃないか」町長の馬場有は強く抗議した。 馬場によると、県の担当課長は涙を流しながら「すみませんでした」といい、SPEEDIの結果を伝えなかったことを謝ったという。

 知らされなかったのはSPEEDIの情報だけではない。 福島県は、事故翌日の3月12日早朝から、各地域の放射線量を計測している。 同日午前9時、浪江町酒井地区で毎時15マイクロシーベルト、高瀬地区では14マイクロシーベルト。浪江町の2地点はほかの町と比べて異常に高い数値を示した。1号機水素爆発の6時間以上も前で、近くには大勢の避難民がいた。 これらの数値は6月3日に経済産業省のHPに掲載された。しかし、HPにびっしり並ぶ情報の数字の中に埋もれ、その重大さは見逃された。

 8月末、浪江町の災害救援本部長、植田和夫にそれらの資料を見せると、植田は仰天した。
「こんなの初めて見た。なぜ国や県は教えてくれなかったのだろう」
菅野みずえはいう。
「私たちは、国から見捨てられたということでしょうか」

※2011.10.6 朝日新聞朝刊
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